娘のひとり舞台が、こうして開幕した。


c0202832_4221386.jpg2012年1月7日(土)に向けて、私も、娘も、昨年秋からまっしぐらに走り抜けて来た。そう、野田秀樹脚本『売り言葉』にかけた情熱は、半端なく、激しい血潮の迸る3ケ月間だった。その始まりから、本番までの怒涛の日々を、黒子をした私が、舞台裏から観た芝居の面白味を全てココに綴ります。けれど、今日、一日では到底、綴りきれないので、何日かに分けて、語り抜きます。それも、この『言の葉の色香』だけでなく、私のブログのあと二つ、アロマや詩のブログにも、関連性を持たせて、ご披露しますので、今日から、少しづつ、このブログの更新に興味を持って覗きに来てくださいね。(※この芝居は、高村光太郎が書いた智恵子抄という純愛詩集がモチーフになっています。)

これまでにも、昨年の晩秋、智恵子と光太郎のお墓参りに始まり、母娘揃っての公民館での初稽古から、師走の会場でのリハーサル風景や、チラシ作成など、色々綴っておりますので、それも、併せてお愉しみください。その時は、まだ本番を控えてた頃でしたので、ネタバレになるような芝居関連の画像や情報は、お届けできなく、心苦しい気持ちでブログを綴っていました。でも、もう、本番も終えて、堂々とこれで、実は…ね!と、出し惜しみしていた芝居の裏舞台をお披露目できることになり、ひとり、興奮しています。こればかりは、裏方として、芝居に関わったひとでなければ、味わえない醍醐味です。表舞台の主役が、娘なら、差し詰め、裏舞台の主役は、この私でしょうに(笑)と、想えるほど、私、衣装の和服着付け以外にも、何役もこなしていたのです。名を変え、姿をくらまし、八面六臂の妖怪の如く…(うふふ)。








c0202832_426832.jpg
                 大正浪漫香る個性的な絵柄:①銘仙のきもの…

まず、今回での私の主な役割は、娘の舞台衣装の着付け担当です。衣装と言っても、和服。それも、①袴姿~②お太鼓結び~③半幅の貝の口まで。3幕早や着替えがあり、衣装が変わる毎に、主人公の智恵子も、女学生~恋する乙女~嫁ぎ妻となるまでの時代の変化も表現しなくてはならず、着物だから、何でもいいではない世界観を、衣装で、目に焼き付けなければならない任務がありました。

c0202832_427391.jpg
         その銘仙に締めた印象的な名古屋帯:②繻子のピンクの帯、絵柄は刺繍の豪華船…
c0202832_4313186.jpg
その繻子のピンクの帯に巻いた帯揚げ:③水色と桃色の淡い絞りの帯揚げ(芝居チラシのイラスト絵の着物柄に掲載)…

c0202832_4285013.jpg



光太郎の妻となり、悩み苦しむ智恵子の普段着用:
④緑の縦縞と柿色格子柄が年代を醸し出す、黒猫の夢二調お召し…




c0202832_430208.jpg

その柿色のお召しに、貝の口で締めたのがこの半幅帯:⑤オレンジに菱形刺繍の半幅帯…(私の母の形見です)

その衣装の話しは、後ほど、詳しく語りますが、その前から、大元になるのは、この芝居のテーマをどう、チラシで形付けるか。これは、私の本業であるコピーライターの出番です。まったくの白紙状態のものに、色をつけていくのです。野田秀樹脚本のこの戯曲は、彼が、名女優、大竹しのぶの為に、書き下ろした芝居です。もう、10年前に、この芝居は、野田秀樹×大竹しのぶ で、完結している話しです。それを、どう演出し、料理していくか、素材は、娘です。彼女のひとり芝居ですが、これに関わる数少ないスタッフは、私の他にも、重鎮となる社会人演劇の脚本家であるソンブレロ氏がバックに控えてくれていたことは、心強かったですね。彼は、娘と、昨年春に、二人劇をご一緒した仲で、今回は、音響操作を担当してもらえました。

チラシのCopyは、私が担当しましたが、その前に、このチラシをどう表現するかは、私の信頼おけるデザイナー城戸香さんに依頼し、完成までのあれこれは、10月半ばから11月初めにかけて、二人で色付けして行きました。それまでに、私は図書館で、智恵子抄に関する本や図録を何冊も借りて、智恵子が最後に切り絵で開花させた芸術の空気感も、切り絵の素材感や、精密なデッサン力による切り絵の素晴らしさに感嘆しつつ、打ち合わせの度に、城戸さんに、この作品、凄いわね!これは、お見舞いの果物包の網のザルやハトロン紙のような薄紙や、銀座の老舗の包装紙だわと、智恵子さんの感性の美意識に、二人共酔いしれてました。そして、衣装の着物や、帯や、帯揚げの画像と、城戸さんが描くイラストの女性の姿に、智恵子さんのかわいいボブヘアの乙女の像を重ねて、和紙の雰囲気を持たせて、大正ロマン溢れる綺麗なチラシが完成したのです。

Copyのキャッチや、ボデイコピーの挨拶文、また、本番にだけご来場者にお配りする、口上書きの文面も、全ては、この芝居のムードを、まだ見ぬ観客になってくださるお一人、お一人に向けて手渡す恋文のような文章にしたく、自分なりに、智恵子抄にどっぷりと浸かった期間でした。キャッチフレーズの文案は、A案とB案のふたつができたのですが、どちら使うかは、娘に決定権を与えました。それで、A案で行こうとなりました。けれど、娘が、どちらも捨てがたい(笑)両方使いたいと申すので、では、こうしようと閃き、B案は、当日、本番に、ご来場客に手渡す貴重なメッセージに添えるキャッチにとなりました。※このCopyに込めた思いは、追って、詩のブログに詳しく綴る予定です。


c0202832_436316.jpg当日、手渡す口上書きの和紙と、チケットにも、智恵子さんの魅力を伝えたくて、アイデアを娘に伝えて、娘も賛同してくれたので、こんな形に仕上がりました。これには、私の母、今は亡き愛媛の母が残していってくれた千代紙のセットを解き、これを栞サイズに切り、裏にはタイトルと会場日時。表は、可憐な千代紙の様々な色柄錦模様を、お客さまに手渡す時に、選んでもらう事にしました。それが、チケットでもあり、持ち帰ったら、きっと、大切にしてもらえるはずだと信じて、本の栞になるように、心を込めて、手作りで娘が作成しました。完成したその一枚づつに、丸い福の落款が押してあります。これは、娘の父親の作品でもあり、この丸い福で、福の紙=“福の神” になる御守りの効果も狙っています。
c0202832_43889.jpg

それから、芝居の情感を高めるために、必要なBGMには、何がいいかと、娘が悩んでいるようだったので、その頃、偶然、京都の恵文社さんのギャラリーで買い求めた不思議な音源CDがいいんじゃないかしら?と閃き、伝えたら、それ凄い!めちゃくちゃ、雰囲気あっているとなり、オートマタのからくり人形が醸し出す、木と木が擦れて軋むような、なんとも摩訶不思議な音源がぴったりはまったのです。この音源は、芝居に使う許可をまず、オートマタ作家夫妻に取り付け、そこからCDのレーベルに連絡し、作曲家にも許可戴き、ジャスラックに申請を出し、著作権の代金を支払うというルールにのっとり、実現しました。あの機を織るような音や、小鳥のさえずりのような可憐な響きが見事にお芝居にマッチしたのです。※この音源に関わる作家さんとの交流の秘話は、また後日、アロマのブログに綴る予定です。


徐々に、こうして、私と娘は、見えないものを、手探りで手繰り寄せ、カタチのない箱を、どんな感性で演出し、音源や大道具・小道具、衣装に至るまで、毎日が智恵子の化身となり、ああでもないこうでもないと、品揃えと、アイデアの炸裂とに、邁進していきました。もちろん、娘は役者のプロではないので、日常は、都内に勤務する高校教諭の顔もあり、体育系クラブの顧問の役目もあり、2時間余りのひとり舞台の台詞を覚える苦労は、並大抵の技では成し得なかっただろうと想います。その事も、後日、秘話をお届けするつもりです。

先に、音源の操作を担当してくださったソンブレロ氏は、もうひとつ、大役をこなしてくださっています。劇中、ラジオから流れる男性アナウンサーの声の主でもあります。その男性の声に、ふたつ、女性の声が挟まれます。ひとつは、娘が今川焼のおばちゃんの声を声色つかって録音してます。あとひとつは、恥ずかしながら、私の声です。平塚らいちょう役で、記者にインタビューされて答える台詞を、私が担当しています。嗚呼、あれが!と、お気づきになられた方、おいでたでしょうか? 娘から頼まれ、平塚らいちょうって、どんな顔の人かしらと気になり、調べたら結構美人さんでしたので、即、引き受けました。与謝野晶子なら断っていたかもしれませんが…。(笑) あのラジオの音源は、私は、公民館での稽古中、吹き込みました。ソンブレロ氏とは、別の日に、違う場所でしたので、最終、それぞれの台詞の音源を、娘がひとつにまとめ編集して、いかにも、ラジオ音源のような聞き苦しい雑音も入れつつ、完成したのです。


c0202832_4415289.jpgさて、さて、私は、裏方で何役こなしたのでようか?①衣装コーディネート、②着付け、③小道具調達、④音源手配、⑤声の出演、⑥照明 ⑦集客 ⑧搬出・搬入・セット ⑨前説 ⑩Copy担当…etc.まだ、あるかもしれませんが、ざっと、こんな具合でした。これだけ関われば、体力的にも、精神的にも、日常の暮らしが、芝居に傾くのは仕方ありません。が、主婦で妻でもあり、それは結構大変な年の瀬と、年明けでした。最近、娘とよく語るのですが、よくぞ、お互いに遣り抜け、当日も、倒れることなく、一応、初日と千秋楽を一気に昼夜幕を開けて、こなしたよねと。それは、きっと、お互いに好きな演劇の舞台に夢をかけていたからだろうと想います。好きな事は、しんどくても、心地よい達成感と、感動の渦に浸れる魔力があるのです。こればかりは、当日、あの舞台を観劇してくださったお客さまにしか、わからない一期一会の感情ですがね。いま、私と娘は、舞台を無事に成し遂げて、終えてからの一時期、脱力感と、心ここにあらずの浮遊してた日々をようやく峠を越えました。だから、こうして、ブログにも客観的に綴れる心境です。

さ、舞台が開くまでの、諸事情は、ざっと、こんな感じです。これは、私が関連したことを主流に綴っています。もちろん、主役の娘の努力の日々は、私の何千倍の血と汗と涙の結晶です。無謀にも、果敢にも挑む我が子に、母である私は、ただ同行二人の心持で、娘のひとり舞台に、黒子で、遊ばせてもらいました。母と子が逆転したかもしれませんが、白紙の段階から、何かをカタチ創ることが好きな私と、演劇の世界に魅了された娘が、どんな舞台を上演したかは、この後のお愉しみにとって、おきましょう。



[PR]
by clematis-myu | 2012-01-25 04:43 | LIVE