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秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ


秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_2222277.jpg今月の初め、秋季一般公開の最終日の四日に、京都御所を観に、晩秋の古都へ一人でふらっと行って来ました。その日は、朝から雨で、やはり行くのは止めとこうかと迷いつつ、昼から晴れると知り、京都行きの電車に飛び乗りました。一時間半ほど近鉄電車に揺られたら、京都です。皆が、憧れの京都に、小一時間程でやって来れるのは、関西と東海のちょうど真ん中辺に棲んでいるお陰やといつもその喜びは噛みしめています。

運よく、御所の近くの冷泉家(れいぜいけ)も一般公開がされている時期で、貴重なお茶時道具も拝観できるとの情報を友人から得ていましたので、両方観ることに決めて、どちらも、拝観時間の限りがあるため、先に、重要文化財の冷泉家を目指しました。最寄りの駅は、地下鉄、今出川駅。そこを出たら、道なりに左手に冷泉家。そこを観てから、Uターンして交差点渡り、御所へ参ります。今年は、春の一般公開も御所を観に来れたので、春秋と一年に続けて観れたことは、本当に有難いことやなと想います。









秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_22234183.jpg冷泉家は、歌聖と仰がれる藤原俊成、定家父子を遠祖とする「和歌の家」です。和歌に関する典籍や古文書を守り伝え、昭和56年に、財団法人冷戦下時雨亭文庫を設立し、現在に至っているとか。建物は、現存する最古の公家住宅で、昭和57年に重要文化財に指定されました。冷泉家が居を構えたのは、江戸初期。以来、四百年この地を動いていない。明治になり、ほとんどの公家は、天皇に同行し、東京に移り棲みましたが、今出川通りを隔て、留守居役を預かったため、冷泉家は京都に残ったそうです。近世公家住宅の唯一の遺構となりました。

ここに来る前に、赤煉瓦の同志社大学が臨まれます。目下、八重の櫻で注目の場所ですね。その同志社の門を過ぎて、公家屋敷の白壁の塀を左手に眺めて少し歩けば、冷泉家の表門が観えて来ます。この本瓦葺の屋根の両端には、阿吽の亀像瓦が印象的でした。表門を入ると受付があり、拝観料大人800円を払いました。すぐ後ろの白川砂を敷き詰めた庭に入り、先に台所と日常生活の座敷を覗き、大玄関と内玄関の出入り口に進みました。この冷泉家では、屋敷内の撮影は禁止でしたので何も説明する写真がありません。その代り、最寄の大学生でしょうか、公家の研究員生等男女若者たちが、要所要所に点在し、家屋や歴史の解説を述べてくれるので意義深い時間を過ごせます。


秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_22244998.jpg座敷棟は、東から上の間、中の間、使者の間と一列に連なっていました。上の間の床の間が部屋の中央に在るのは、神事の神の座を中央にという考えかたでそれが特徴的でした。この部屋の襖は、牡丹唐草で無季的な唐紙を貼ったのは、歌を詠む折に、室内からの季節を排除して絵柄が邪魔にならない配慮だそうで、流石、和歌の家だと敬服しました。古文書を納める御文庫や、蔵などの傍には、井戸が設けられていました。なんと、その蔵の屋根は取り外しが可能で、母屋が火災などの折には、屋根を取っ払い、中の宝物を持ち出したり、間に合わない時は、そこから、井戸へ放り込み、古文書などの貴重品が燃えて灰にならないようにしたそうで、これこそ、現在にも活かせる災害の智慧であるなと感じました。





秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_23241014.jpg※ここでは、拝観土産にと、冷泉家の襖絵を模した一筆箋を記念に購入しました。扇と和歌の絵柄です。



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秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_22363931.jpg冷泉家を後にしてから、御所への道程は、春に一度訪れていたので、すいすいと足を運ばせ、入り口に当たる宣秋門をくぐり、砂利道を進みながら、建礼門へと進みます。その前に入口で持ち物検査のような関所を越えて(笑)、屋敷の中へと順序よく進みます。なんと、御所での一般公開は、拝観料は無料です。しかも、見渡す景色や建物は、撮影OKです。ですから、老若男女、外人観光客も含めて、皆さん、俄かカメラマンの如く、あちこちでシャッター音が鳴っていました。私も、デジカメとスマホ撮影の両刀使いで頑張って撮影しました。どうしても、拝観客が多いので頭や姿が入り、邪魔だなと想いつつも、私もその邪魔な人間の一人なんだから、お互いさまだと言いきかせて順路よく拝観させてもらいました。一人で来ているので、時々、撮影を出逢った気立てのよさそうな人に頼んでは、スマホ撮影やデジカメで私も御所の借景に溶け込みました。

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秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_22421650.jpg◆御車寄(おくるまよせ)
まず、聳えて見えるのは、御車寄(おくるまよせ)。昇殿を許された者だけが参内するときの玄関です。






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◆諸大夫の間(しょだいぶのま)
次は、諸大夫の間(しょだいぶのま)。参内者の控えの間で、身分の上下で各部屋に通されます。襖の絵に因み、格の高い順に、「虎の間」「鶴の間」「桜の間」と呼ばれる部屋や並んでいました。

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秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_22501682.jpg◆新御車寄(しんみくるまよせ)
その屋敷を見終えて、次の広場へ足を運ぶと、新御車寄(しんみくるまよせ)に続きます。これは、大正4年、大正天皇の即位礼に際して、建立。大正以後の、天皇皇后陛下の玄関でもあります。

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この新御車寄の左手に朱塗りの塀が臨まれます。その月奉門を仰いで、砂利道の広い庭を進むと、承明門から、南庭の向うに紫宸殿の姿が覗き見えます。

振り返ると、大きな建礼門が聳えていますし、朱塗りの回廊をぐるっと取り巻く感じで日奉門をくぐり、紫宸殿の立派な雄姿が目の前に現れるのは、何度来ても、感動的です。
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◆紫宸殿
紫宸殿の左右には、右近の橘、左近の櫻が植えられています。(ここで面白い薀蓄ですが、先に観た冷泉家では、右近の橘に左近の梅という伝承があるそうです。本来、古来中国よりの伝来では、橘と梅だったとか。それで、学者の家柄の冷泉家では、本来の中国から 伝承を守って橘と梅で貫いているとか。解説で聞きかじった文献ですが、一番印象深い由来でした。)なぜ、梅が櫻に化けたのか。やはり、日本人の美学、儚さは、桜に例えられるからでしょうか。



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◆清涼殿
紫宸殿を過ぎると、次は、清涼殿(清涼殿)を拝みます。ここは、平安時代に天皇が日常の御生活の場とされた御殿です。中央に、御休息の御帳台があり、その前の厚畳は、昼御座(ひのおまし)という御座。その前、漆喰で塗り固められたところは、石灰壇(いしばいのだん)といい、地面になぞらえられている。ここから、伊勢神宮を遥拝されたとか。
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◆御池庭
清涼殿の広い白砂の庭を横目に前に進むと、そこは、御池庭を望む、小御所(こごしょ)と呼ばれる儀式の場。神殿造りと書院造りの両要素が混在した様式美の建物。池は、回遊式庭園で、前面は、州浜で、その中に、舟着きへの飛び石を配置。右手に欅橋が架かり、四季折々に美しい落葉樹が憩いの借景になって美しかった。
そこから、蹴鞠の庭(けまりのにわ)や、御学問所(おがくもんじょ)を望み、御常御殿(おつねごてん)へと誘われます。



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◆御常御殿と、御内庭
御常御殿は、天皇の日常のお住まいとして建立。その前には、御内庭(ごないてい)が臨めます。このお庭は、屈折した作りで、土橋や石橋を架けて、趣向を凝らして、奥には、茶室も構えています。


御常御殿から、御三間と御学問所の間を経て、出口の清所門を出ると、ちょうど、一時間半ほど、速足で観賞した御所でしたが、春に観た風景と秋の風景は、季節の風が確かに違う気がしました。拝める屏風絵や飾りの装束などは、違うが、空や、木々や草花の色香が萌える季節と、色づく季節との微妙な差でしょうか。見届けるもの、小さな悦び、出逢う人たち、大勢の人の流れの中の弧を感じたりして、いい時間が流れました。やはり、日本人として、春と秋の御所一般公開は、ぜひ叶うならば、誰もが観て欲しいと切に想います。皇室に息づく日本美の極みや歴史の根底を垣間見れて、日本人としての誇りとか立ち位置が見えてくるそんな感情が沸き立ちます。




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秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_231965.jpg清所門を出てから、私は、京都御苑の中の杜の道を歩いて帰りました。蛤御門を右手に観て、丸太町通りの出口になる堺町御門を出て、振り返り、一礼して帰路につきました。この杜の中では、大きな古木が沢山植わっていて、見上げる度に、気の遠くなるほどの歴史を感じました。樹木の年輪は、幾重にも御所の営み、古都の移ろいを見届けているのだろうなと。そっと、樹木の幹に手を当てて、木々の鼓動を聴きました。絶え間なく続く命の波動、御所の杜で感じた古都の秋でした。
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秋季一般公開 冷泉家~京都御所へ_c0202832_232676.jpg※御所での参観記念には、この一筆箋を求めました。ちょうど、御所の御印の菊の御紋の落款が押されたハガキ入りでしたので、大変、いい記念になりました。
by clematis-myu | 2013-11-18 23:35 | 季節の便り