人気ブログランキング | 話題のタグを見る

魔女の呪文が、リフレインする夜に…

先週の10月19日、私は、能登への一人旅。京都からサンダーバードに乗って、逢いたい人のいる七尾の駅へと心を躍らせていました。逢いたい人は、加賀友禅染め作家の志田弘子さん。彼女との馴れ初めは、2年前の、今はもう秋♪って時候に、能登観光の旅取材で出逢ったのが最初です。
レトロな建物が並ぶ懐かしい町並み。5月の連休に町興しで飾る「花嫁のれん」で、話題になった“一本杉通り”を、友禅作家の志田さんが馴染みのお店や店主たちとの交流をまじえて、散策がてら案内する。と言う、たった数時間の取材の合間に、私たちは急速に親しくなりました。そして、もう一度、今度はプライベートで、この地での再会を誓う仲になったのです。




最初の再会は、意外と早くやって来ました。一年後の2008年。それは、七尾ではなく、名古屋の名鉄百貨店の催事会場で。志田さんの作品が展示されることになり、ご案内を頂き、東海エリアに住む私は名古屋へ向かいました。
魔女の呪文が、リフレインする夜に…_c0202832_332152.jpgそして、ようやく、2009年のこの秋。最初の約束の地、七尾で。彼女の家にお泊りもさせて頂きました。それには、とても嬉しいご褒美のような観客席が私たち二人を待っていたのです。なんと、あの仲代達矢さんの無名塾、しかもロングラン公演の【マクベス】の舞台。憧れの<能登演劇堂>で繰り広げられる、ここだけの醍醐味は、なんと言っても、世界中で一つしかない、舞台装置につきます。
http://engekido.com/index.html

そうです。観音開きの扉が開くと、舞台の奥には、大自然のバーナムの森が拡がり、ほんものの馬が7頭も駆け抜けて行きます。その壮大なスケールと、仲代達矢という眼光鋭い役者魂の塊のようなマクベスの、なんと人の心を魅了する演技力の素晴らしさ。そして、エキストラで舞台を盛り上げる地元の人たちや、演劇部の高校生たちの純粋な眼差しには、主役自ら、カーテンコールでは、心からの拍手を贈りました。
魔女の呪文が、リフレインする夜に…_c0202832_311135.jpg名優・仲代達矢主役で、舞台構成も演技も、超一流ならば、ここでの舞台の成功の鍵は、七尾の市民の心意気を忘れたらいけません。数週間前には、志田さんもモギリをしたと言うからには、市民あげての町興し。能登演劇堂が七尾に誕生したのも、仲代夫妻が初めて訪れた能登旅行で味わったこの町の人との交流が発端というのも、頷けます。


マクベスの戯曲は、シェイクスピアが書いた怖い芝居です。この舞台の最初に登場する3人の魔女たちの囁きが、私は、耳に焼きついて今も離れません。合言葉のような、単純なフレーズですが、繰り返して唱えると、心地よくなる。不思議な呪文のようにも聴こえてきます。流石、天才、シェイクスピアの台詞は心くすぐられます。マクベスも、この囁きで、唆されて、してはいけないことをして、やがては、自滅するのですからね。

いいは、悪いで、悪いは、いい。

         いいは、悪いで、悪いは、いい。

                 いいは、悪いで、悪いは、いい。

ああ、なんとも、摩訶不思議。このフレーズは、人の心の奥襞に潜む、薔薇の花の棘のように、綺麗で危険。
                    
by clematis-myu | 2009-10-31 02:54 | LIVE