和服三昧、お江戸の一日。 その2「キモノ工房」

歌舞伎座での千穐楽(一部演目)を見終えて、私と娘は、その次の約束があるキモノ工房へと急ぎました。そこは、都内の中野区にあります。ツイッターのご縁で予てより知り合えていた染色家・佐藤節子 @SetsukoSato さんが運営されている【キモノ新空間 あらた工房】です。江戸っ子ならではの快活で好奇心旺盛な節子さんは、この道(東京手描き友禅)、何十年というベテランで、熟年の境地ながらも、お目にかかると、年齢を感じさせない若さで多方面でご活躍されている方でした。


c0202832_15245276.jpg以前より、この工房のHPhttp://arata.jp/index.htmlの読みやすさと、キモノを愛する精神や活動の幅や深さに興味を覚えていた私は、いつか、上京した折に、この工房を訪ねたいと祈願してました。ちょうど、今回、歌舞伎座の観劇を娘とできるし、しかも、和服を着ているし、昼間に歌舞伎は見終える予定なので、夕方の数時間は、自由に時間がとれることも幸いして、ツイッターの気軽さで、ひと月前にDMで、節子さんに直々打診をしてみました。ら、偶然にも、工房はGW期間で本来はお休みで、主の節子さんも、別荘の山へ出ている期間でしたのですが、ちょうど私が訪れる日には、工房に戻っているとかで、運よくお目にかかれるチャンスを得たわけです。






地下鉄の東銀座から落合で降りて、タクシーを拾い、工房に辿り着いたのは、夕方4時前。近くまでわざわざ、節子さんが出迎えにきてくださってました。初対面ながらも昔からの知り合いのような懐かしさで、工房の玄関に招いてくださいました。訪問するやいなや、愛犬家ということがよくわかる歓迎コールが(笑)駐車場の奥の犬舎からは、愛犬のwelcomeな鳴き声が聴こえてきましたよ。


c0202832_15291565.jpg閑静な日本家屋の表玄関は、工房というよりか、清楚な旅館の佇まいです。畳の部屋に上がるとそこはもう、素敵な手描き友禅の作品が並ぶ展示スペース。中央のテーブルに招かれるまま、節子さんの薦めで私と娘は、一気に異空間のキモノ美の話しに夢中になりました。お部屋の室礼もさることながら、おもてなしでうけたお茶請け菓子などの器ひとつとっても、美意識の漂う居心地のよい空気が流れます。私は、仕事柄、アーチストや作家さんのお宅を訪問して取材をすることも多くあるのですが、加賀や京都のそれとはまた違う節子さんが手がける江戸流の手描き友禅の魅力に触発され、仕事モードのスイッチが入りそうになりました(苦笑)。


c0202832_1531514.jpgこの日は、4月も末でしたので、お部屋の展示物には、皐の季節を愛でる花々の着物反物や帯地で飾られていました。どーんと中央に見える新緑の晴れ着は、薔薇の絵柄が大胆な訪問着。油絵で描いたかの如く、斬新で迫力に満ちた筆遣いです。こんな絵柄の感覚は友禅の染め絵では珍しいと感じた程、斬新でした。カーネーションが華やかに微笑むような昼夜帯地の作品も、ひときわ目を惹くモノでしたし、凝った織りや染め生地の反物や帯地が並ぶ作品に囲まれて、夢うつつのひととき。
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お得意様としてもご贔屓筋の歌舞伎役者さんとの交流や、オペラ歌手の娘さんや、写真家の息子さんのことや、日本犬(甲斐犬)の支援や、各地の農家や職人さんとの交流など、節子さんの多方面でのご活躍の話題も面白く、あっという間に時間が経っていきます。
c0202832_15342815.jpgここに娘とお邪魔した経緯は、娘が横浜での大学生活を経て就職して、東京に移り住み、昨年秋には、着付けを習い出し、キモノに興味を持ち、着て行く愉しみを覚え出したこともあり、日頃離れて地方に住む私の母心としては、この時期こそ、いい大人の着物好きのお仲間や、諸先輩の方との縦の交流を娘に持たせたく、
c0202832_15372334.jpgそれには、予てより私自身が魅了されていた節子さんの活躍するこの工房でのイベントに、娘が参加できるチャンスがあれば、そして、顔見知りになっていたら、今後の彼女の着物人生には、素晴らしい花道になると確信していたからです。この初顔合わせは、私にとっても、娘にとっても、大切な新たな扉を開ける儀式となりました。まさに、工房の屋号の如く、あらた工房。あらたな門出です。




この日、節子さんが、キモノと洋服の違いを教えてくださいました。“着物は、衣装です。衣装と想えば、着る時の舞台設定、どう自分が振る舞うかも自ずと違うはず。新たな自分が生れますよね”と。嗚呼、目から鱗とはまさにこのこと。演劇をライフワークに生きがいと想っている娘には、何よりの贐の智慧となりました。

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c0202832_1542154.jpg話しが弾み、お隣の部屋も覗かせてもらいました。すると、まぁ、こちらは、フローリングの床に、白木の木肌がシンプルなギャラリー感覚のアートスペース。ここにも、初夏の装いの襲の薄物から季節の花柄模様の晴れ着に、可愛い帯地や、オリエンタルでエキゾチックなものまで。これが全て、節子さんの五感から誕生するものかと想うと、そのキャパの広さに、圧倒されましたね。世代を超えて、超越したものがARTの世界には存在するんだと実感しました。そこで、娘と共に、好きな作品の前で記念写真を撮らせてもらうことに。

娘は、パッと華やかで明るく元気なタンポポの絵柄、ぜんまい紬の帯地の前で。
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これは、HPにも紹介されてます。
◆野原の蒲公英六通/染名古屋帯
http://www.arata.jp/kimono_gallery/NCS-0003.html#1

私は、襲の妙味が美しい紗合わせの緑の訪問着の前で。
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節子さんとのツイ-ショットは、大きな紫陽花の花柄模様が雨に映える訪問着の前で。
c0202832_1641989.jpg◆紫陽花に雨/訪問着
http://www.arata.jp/kimono_gallery/HM-0003.html#1


このアトリエの空間では、四季折々、作品を展示するほかにも、イベントの季節を愛でる布飾りの作品も自由に観てもらえるような趣向も凝らしておいでとか。数カ月前には雛の節句に合わせた吊るし雛の布遊びもされていたそうです。海外からも珍客が詣でたり、中学生の修学旅行グループの見学もあるとか…まさに、来る者拒まず、百花繚乱な新空間キモノ工房です。

節子さんのお嬢さまの集いで、FBでは、キモノ着きな方のための<蜻蛉倶楽部>とかも開催されているとかで、FBをしている娘は、早速そのお仲間に入れてもらえたようです。節子さん、好意的なお誘い、ありがとうございます。https://ja-jp.facebook.com/tonboclub
写真家のご子息が手掛けている◆ムカシアルバムの保存活動に、いたく感動した私は、いつか必ず、いまは亡き愛媛の母の想い出のアルバムから貴重な着物の写真をデータ保存の一枚に加えてもらいたいと想っています。http://www.arata.jp/setsukosato/mukashialbum/index.html


c0202832_16193919.jpg三時間程も居心地の良さに、長居をしてしまいましたが、これもツイッターをしていたお陰で成し得たご縁。人との巡り合わせは、こうして、小さな点から点が線となり、縦糸の節子さんと、横糸の私と娘が織りなす綾で、新たな模様が浮かびあがり、また趣の違う人たちとの結び付きが成し得るのだと深く感じ取られました。この大切なご縁を、末永くおつきあい、深められますようにと祈りつつ、今回の初顔合わせ、工房訪問の美しいひと時に、惜しまれつつもお別れを告げ、夕暮れ迫る街並みを足早に、次の予定の店へと急ぎました。(また、このつづきは、後日。)






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by clematis-myu | 2013-04-28 16:27 | Memory